【感想】 黒猫の三角

すべてがFになる』ドラマ化と聞いて

皆さん、よろしくて?誰のためでもなく、何のためでもなく、誰にも願わず、何も祈らず、乾杯!

以下ネタバレ

S&Mシリーズは全部読んだのですが、
他のシリーズにはなかなか手が伸びず(S&Mシリーズがよかったので、それで気持よく終わりたいという気持ちもあったと思います)、放置していました。
しかしながら、この間、S&Mシリーズドラマ化の報せを聞いたので、読んでみました。

犯人は、恥ずかしながら、全くわかりませんでした。
というのも、森博嗣は、叙述トリックみたいなことしないだろうな~という先入観があったのが、大きいと思います。
でも、ぱらぱら読みなおして見ても、ヒントがたくさんありますね。
条件だけ見れば、これぐらいしか選択肢がないし、この点については、アンフェアという気持ちは起きませんでした。


こっからトリックの踏まえた上で、ストーリーに関する僕の考察や感想です。

幽霊について

一読したあと、一番疑問に、と言うか「え、そんなのありかよ」と思ったのがこれです(多くの人がそう感じたと思います)。
しかし、よくよく考えてみたのですが、これ、坂本が共犯だったということにすれば、都合がつきますね。
口を割ったのも、小田原政哉が死んだあとですし、幽霊について聞いた紅子の反応も意味深です。
もっと言うと、密室が完全になったのも、彼女のお陰ですね。
あと、警察を呼ぶとき、どっちの階段から降りたのかわかりませんが、登ってきたはずの(あるいは、こなかったはずの)保呂草と会わなかったのもなんとなく怪しいです。

紅子が真相に気づいたタイミングについて

これは確信はないのですが、「テストをわざと間違えて~」の下りがあるように、紅子は真相を知ったタイミングについて、嘘をついているように思えます。
微妙ですが、それについての2つの理由。

1つ目の理由は、「あきすての」に関して。
秋野の偽名について、紅子は飲み屋で話題に出しています。
当然、バッテリーの話を聞いてから、調べるタイミングなんてありませんから、それ以前に偽名について知っていたことになります。
ただ、これに関しては、大きな根拠にはなりません。
なぜなら、事件の手掛かりから、保呂草は十分に疑われる立場であり、真相を知る前に調べていたとしても、不自然ではないからです。

2つ目は、さっきの幽霊についてです。
これは、単純に、坂本の証言で犯人が分かったのではないかという疑問です。
ストーリー上からみると、紅子が新しい情報を得たあと、偽名を調べることができそうな最後のタイミングがここです。
実際、紅子はこのあと、研究に熱中してるような描写がされます(真相が分かったから?)。
仮に、このときすべて確信していたとすれば、紅子は事件のことについて、しこちゃんやれんちゃんに嘘をついて煙を撒いていることになりますね。

中橋蓄電について

中橋蓄電については、保呂草と秋野の外見がそっくりという描写はありませんし、嘘をついている以外ありえないと思います。
どちらの高校時代の旧友だったのかも謎です。
最初に「おかげでつつがなく~」とか言ってるし、保呂草になりすますのを手伝っていた可能性は、大いにありそうです。
最初の凶器も実はここで手に入れたものでしょうか?

大失敗について

中橋蓄電にトランシーバーを返しに行った時の会話です。
保呂草は、仕事について「大失敗」と言っていますが、これはどちらの意味なんでしょうか?
もし、殺人についての「大失敗」だったとしたら、どこでしょうか。

個人的には、人影をれんちゃんに見られたあたりが怪しい気がします(目撃された時、会話で慌てすぎ?)。
そもそも、今回の事件、密室にする必要がないですし、さらに密室にする上で、人影を目撃される必要もありません。
単純に紅子の気を引きたいがため、でも一応の理由にはなりますが……。

あと、6時間で済むプランなのに、丁寧に12時間分のバッテリを用意したのも、多少気になります。
もともと、一晩かけてやるつもりが、目撃されたせいで、プランが変わってしまった?
でも、これに関しては、探偵業務に見せるためのカモフラージュだった可能性も高いですね。

キャラクターについて

S&Mシリーズに比べて、キャラクターが濃いですね。
犀川先生なんか、いかにもその辺に転がってそうな理系人間だったのに対して、こちらの4人組(3人組?)は、しこちゃん以外、非常に浮世離れしています。
エキセントリックさマシマシな感じですが、独特の会話のリズムは健在です。

今回の探偵役の紅子は、犀川先生や萌絵より頭が良さそうに見えます。
なんとなく、黒猫の三角は「四季が探偵で、犀川先生が犯人だったらどうなるか?」という話にも見えました。

今のとこ、お気に入りは、紅子とネルソンです。


実は、これの前に『φは壊れたね』は読んでいて、正直、そっちは全然面白さが分からなかったのですが、こっちはとてもよかったです。